VirtualBox 4.1 r73009 正式版公開...
「1 週間に 1 回」のペースに従い 14 日に VirtualBox 4.1.0 r72886 β3 が登場しましたので, この週末にかけて試していたのですが, そうこうしている内に昨日早くも正式版の r73009 が登場してしまいました。 …結果論としては何も不具合が直っていませんでしたので, 以下は β3 からの共通の情報として書いています。
β2 まで発生していたハング現象については, Windows 7 ゲストでは Aero のオン・オフ, WDDM 版・XPDM 版ドライバーの違いにかかわらず発生していたのに対して, Windows XP ゲストでは発生していなかったことから, チップセット方面が怪しそうということで, 今回はテスト用として PIIX3 チップセットの Win 7 ゲストも追加しました。
その Windows 7 ゲストですが, 4.0.10 まで使用していたのと同じ Windows 7 Professional を選択しました。 ICH9 方面が (自身の環境で) 安定するまでは並行して使うことになりそうです。 …ある意味面倒くさい。 (笑) それはともかく, 最初 Ultimate の媒体を間違えて使用してしまいプロダクト ID の入力まで進んで漸く間違いに気付きました。 おかげで 1 時間強が無駄に。 (^^;)
インストールに続いて多大な時間を掛けパッチ類のインストール。 VDI って何故こんなにディスクアクセスが遅いのかしら? 「VMware Workstation なら 1 日で終わるところを 3 日掛かる」といった感覚です。 (^^;) ともあれ最後に VirtualBox Guest Additions を導入します。 …どうやら予想は当たったようで, チップセットが PIIX3 だとハングは発生しないようです。 あ, 前にも書きましたが「完全に止まる」のではなく「1~数分止まる」のパターンです, 念のため。
ハングは収まりましたが, 4.1 は やはり全般的に描画が遅いです。 そして特に WDDM 版で それが顕著です。 エクスペリエンスは以下のとおり。 上 が VirtualBox 4.1.0β3, 下 が参考で VMware Workstation 7.1 です:
VirtualBox については これまでの経験則どおり正式版でも同じ数値でした。 それはともかく, 処理系自体の負荷が高いのか CPU が 3.3 と かなり低い数値となっています。 それが「ゲストにとってはハードでも内部処理的にはソフト」といった描画にも影響し, 結果としてゲーム用グラフィックス辺りが 2.1 と殆ど「基準をクリアーしただけ」の数値となってしまっています。
実際, 体感速度も そのとおりで 10~12 ほど出ていた「タイムリープぶーとべんち」のスコアが 4.1.0β3 以降では 2 しか出ません。 もっとも, XPDM 版でも 6 なので「ゲスト PC 自体が重くなっている」気がしないでも…。 それはともかく, こと WDDM 版ドライバーについては「真っ当な方法ではなくクリティカルな方法で実現」している点が大きく影響していると思います。
本来, Aero 有効化には SM 3.0 と DirectX 9.0ex に対応した上で WDDM 版ドライバーとする必要があります。 ところが, VirtualBox 4.1.0 は SM 3.0 には対応していません。 どうやら Aero や WDDM に関する処理が Direct3D 方面とは別の専用ルーチンで処理されているようなのです。 そのため Direct3D との整合化が必要になり それが速度に大きく影響しているのです。 しかも, まだ整合化が完全ではないため, そこかしこで描画の不具合が発生しています。
結果, VirtualBox 4.1.0 では, こと Direct3D 方面の対応度に限っては 4.0 から大きく後退してしまい, それまで動作していた多くのソフトが動作しなくなっています。 まずは DirectX 6.x~8.0 辺りのソフトは ほぼ全滅…初期化でハングしてしまい動作すらしません。 Diablo II や AoK, 3DMark2001 SE 辺りは画面表示すらされることなく固まります。 「終了」するわけではありませんので, タスクマネージャーで強制終了する必要があります。 (^^;)
ちなみに, 3DMark03 は従来と同じところで固まります (若しくはエラーが発生。):
ここでは Windows XP ゲストに登場頂いていますが, Aero 関係以外 XPDM 版ドライバーを含めて Direct3D 方面に手が入っていないことから, 従来と全く同じ箇所でテクスチャーの作成に失敗し各テストのロード時にエラーが発生します。 (若しくはハング。) 「テクスチャーの作成という基本中の基本すら まともに実装できていない状況で何をやっても同じ」と開発陣には言いたいですね。 だから いつまで経っても Direct3D すら Experimental が外れないのです。
傾向の最もはっきりしているのは「全画面表示系ソフトが基本全滅」という点です:
画像は『メギドベンチ』なのですが, 見てのとおり画面の初期化に失敗して黒抜き画面となってしまいます。 『ゆめりあベンチ』や『FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3』も同様で, ハングする時もあります。 表示変更を行えないので『タイムリープぶーとべんち』のように変更により表示させることが可能なのかは判りません。
↑『聖なるかな』や『ぐるみんベンチ』では描画が正常に行われません。 特に前者は自ターンの開始時に描画が失敗し一般保護エラーとなります。 4.0.12 までは正常に動作するわけですから, 明らかに個々の処理も別物となっていることが判ります。 ちなみに, ぐるみんベンチは DirectX 9.0 設定でしか動作しません。 WDDM 版では XPDM 版と異なり「3D については 9.0 対応 API しか動作しない」のでしょう。 謳い文句が 8/9 となっていますから, いずれは対応されるのでしょうけれど…。
↑『タイムリープぶーとべんち』や『らぶデス 2 ベンチマーク』は正常動作するものの描画速度が 1/10 程度に落ち込んでしまっています。 動作するだけ「遙かにマシ」と言えるのかもしれませんけれど。 この辺りの「比較的まともに Direct3D を使用している」ソフトでは, 全画面表示にすると たまに黒抜きになってしまいます。 あと頻繁にテクスチャーの作成に伴う小ハングも発生します。 そういった意味では丸 2 日も放置すると次へ進むのかもしれません。 >3DMark03
↑『闘神都市III ベンチ』は少々描画がおかしいものの普通に動作します。 速度低下も僅か。 不具合の傾向は『聖なるかな』 (のステージ画面) と同じですね。 一部のオブジェクトが描画されないのとレンダリング結果としての色が おかしくなる…といった感じです。 その辺りは設定を弄ることで軽減化が可能です。 ただ, ホスト環境によって有効な設定は異なるでしょうね。
↑『プリミティブリンク』や『春色桜瀬』, 『Wiz Anniversary』, そして『戦女神 VERITA』といった「一部の処理のみ Direct3D を使用」といったソフトは普通に動作します。 4.0 と異なり速度低下も全くありません。 この辺りの あまり Direct3D を使用していないソフト (もちろん,使う以上ソフト自体は Direct3D で動作。) では,『タイムリープぶーとべんち』辺りと異なり,全画面表示への切り替えで問題の発生することはありません。
↑実質 DirectX 対応ソフトといえそうな『プリズムリズム』, 『秋色恋華』, 『恋色空模様』, 『FORTUNE ARTERIAL』, そして『夜明け前より瑠璃色な』といったソフトは何の問題もなく動作しますし, 描画速度も 4.0 より高いです。 もっとも, この辺りが動作しないとなると逆に困ってしまいますけれど…。 (^^;)
↑先に書いたとおり「Direct3D 自体への対応度は 4.0 と全く同じ」ですので, 『のーぶる☆わーくす』辺りは やっぱり強制的に GDI 描画となってしまいます。 正式版でも Aero と Direct3D の完全な統合は行われなかった模様。 Direct3D の「Experimental」表記が外れない限り無理でしょうね。 3DMark03 すら動作しないようでは何時になるか判りませんけれど…。 しかも,WDDM 版と GDI の相性が悪いのか, 4.0 と異なり随分描画が重くなってしまっています。 >紙芝居レベル
↑OpenGL 自体の対応度は 2.1 のまま殆ど変わっていませんが (Extensions が 71 から 77 へ増加。), ディスプレーのリフレッシュレートと同期するようになりました。 滑らかさが異なることから描画速度は上がっていると思います。 この辺りからも「OpenGL を実装した上で, それを使って DirectX へ無理矢理対応」といった感じを受けます。
↑そうそう。 正式版でも対応されなかった仕様で非常に残念だったものが一つ。 それは…解像度。 XPDM 版ドライバーではユーザーの指定したカスタム解像度がゲストの再起動後も引き継がれるのですが, WDDM 版ドライバーでは必ず既定の解像度へ戻されてしまうのでした。 なにげにとっても不便です。
今回 WDDM 版ドライバーと Aero への試験対応が行われたわけですが, Direct3D 方面への対応を殆ど進めていないだけあって, 何もかもが中途半端になってしまっている気がします。 仮想 PC 本体側の内部処理の変更も伴っていることから, それが悪い方向で従来の XPDM 版ドライバーにも影響しています。 WDDM 版ドライバーへ手を着ける前に, まずは DirectX 9.0 への確実な対応を行って欲しいところですね。 VirtualBox の習性のようなものですから, きっと今後も治らないことでしょうけれど…。 (^^;)
なお, XPDM 版ドライバーを使用した場合 (特に Windows XP 環境。) については, 基本的に 4.0 の頃と変わっていません。 仮想 PC 自体の内部処理変更が影響して遅くなった部分 (や動かないソフトの発生。) がある一方, 明らかに描画の速くなった部分 (WDDM 版対応の影響でしょう。) もある…といった感じです。
まぁ, 描画方面の話は小さな問題なのかもしれません。 「VDI 方面の大バグが正式版でも直っていない」ことに比べれば…。 (^^;;
Jul.27,2011 追記
スナップショット方面の不具合を軽減できているとして, VirtualBox 4.0 までと同じように使いたいのであれば, WDDM 版ドライバーは御法度でしょうね。 おとなしく XPDM 版ドライバーを使用しておくのが吉でしょう。 それでも若干の速度低下が見られますけれど…。 ぶっちゃけ, 言ってしまえば「4.1.8 辺りが出るまでは 4.0 を使い続ける」のが正攻法で一番話は簡単です。 (^^;)
|