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<公開:Nov.27,2011>

■ Parallels Workstation 6 for Windows & Linux Build 13934


[Parallels Workstation 6 for Winのスナップ]

・Parallels Workstation 6 について

 前作 Parallels Desktop 4 for Windows & Linux で「Desktop」の名を冠し, コンシューマー向けへのアプローチと「for Mac」との共通化を期待させた Parallels の Windows/Linux 向けデスクトップ製品ですが, 今回再び「Workstation」の名前に戻ってしまい, その名前のとおり業務用途の色が濃い内容となってしまいました。 以前から行えたものの「いよいよ具体的に動き出したか」と思わせる VT-d によるホスト側ビデオ及び NIC の直接利用も, 当該デバイスの 2 枚差し (以上) が必要な上 Extreme 版のみという体たらくです。 もはやコンシューマー向け製品は期待できないことでしょう, こと Windows/Linux 向けについては。

Extreme 版はともかく, 非 Extreme 版の存在意味を見いだせない気がします。 「業務用途でのデスクトップ利用」という位置づけは解るのですが, Parallels Desktop 6/7 for Mac と同レベルの Coherence 表示や Parallels Mobile への対応度だけでは いかにも弱く, Direct3D に対応していないことから, Windows 7 辺りではエクスペリエンスの測定すら行えず, OS の利用自体に支障を来す状況となっているのですから。 (測定結果に基づきパフォーマンス調整などが行われる。)

・ホスト環境等

[Parallels Workstation 9 と VMware 8.0]

 メイン環境である dynabook Qosmio T851/D8CR です。 x64 化に伴い Windows Virtual PC との同時並行動作は行えなくなりましたが, VMware Workstatioon 8VirtualBox 4.1 とは引き続き問題なく使用できています。

 Parallels Workstation 6 for Windows/Linux と, 名前を元に戻したことから判るように, 基本的には Parallels Workstation for Windows & Linux 時代のままで止まっています。 Parallels Desktop 7 for Mac の機能を取り込んではいますが, もはや Direct3D を始めとするコンシューマー向けの機能が実装されることはないでしょう。 それ以外の部分については, VMware や VirtualBox に対して遜色なく, Mac 版の Desktop 6 や 7 で実装されている機能についても ちゃんと実装されています。

 Parallels Workstation 6 で注意したいのは VT-x が強制的に有効となる点です。 単体で使用する分には何ら問題ないわけですが, VMware 等との併用が必要だったり, 他に VT-x を必要とするソフトを使用する場合には死活問題となります。 ただ, これは VMware 等が そうであるように, 本体の起動自体には影響しません。 さらに, VT-x の使用自体も見かけだけで, 他に手段は存在しないものの設定ファイルを直接編集すれば VT-x の無効化を行えます。 無効化を行ってあれば, 右画像のように VT-x を必須とする VMware 8.0 での x64 ゲストとの並行動作も可能となります。 さすがに「両方で x64 ゲスト」は無理なので, 念のため。

この辺りは Parallels Desktop 4 for Windows & Linux の頃と同じですので, すでに設定してあれば そのまま実行が可能です。

・ゲスト PC 環境

 Parallels Desktop 4 の段階で VMware 等他のエミュレーターと比べて世代の新しい i965 のチップセットが実装されています。 ただ, その能力を活かしたゲスト PC の構成となっているかと問われると微妙です。 (^^;)  一部のデバイスで使用できる VT-d 版のドライバーを使用できるホスト環境で, さらに Extreme 版を使用しているのであれば, 意味があるのかもしれません。

8 コア CPU, 8GB メモリー, 2TB HDD…, といった辺りは, こちらのほうが先行し既に Desktop 4 の時点で対応していたのに対して, 例えば VMware が VMware Workstation 7.1 辺りの頃に ようやく追いついた…といった感じになっています。 基本能力自体は決して低くありません。

 環境設定で注意したいのは起動デバイスについてです。 通常, OS のインストール時には DVD-ROM や CD-ROM から立ち上げることになりますが, その際起動デバイスの優先順位を指定することは, 昔と異なり少ないと思います。 が, Parallels Workstation 6 においては, 優先順位が 1 番でない限り, なぜか光学デバイスからの起動が行われません。 起動デバイスとして指定してあろうが無かろうが無視されます。 OS のインストール時だけは必ず光学デバイスの起動順を最優先に設定しておきましょう。 この辺りも Desktop 4 の頃から変わっていないことから, あまり開発に熱心ではないことが伺えます。 (^^;)

 Desktop 4 の頃に新規インストールした Windows 7 (x86) の構成を上げておきます。 VMware のように あれこれホストのデバイスを云々…といったものが存在しないことから, 素直な i965 マシンとしての構成となっています。 一部 i965 のくせに変なところへぶら下がっているデバイスが存在する辺りは気にしてはいけません:

[デバイスリスト]

・ゲスト OS

[Window 8 on Parallels Workstation 6]

 Windows 2000 以降の Windows NT 系 OS, Debian 6.0, Fedora 15, OpenSUSE 11.1, RHEL 6.1, SLED 11 SP1, Ubuntu 11.04 といった OS に対応しています。 殆どの OS では 64 ビット版も可能です。 対応 OS としては載っていませんが, ドライバーが用意されているところを見ると Win9x や Windows NT 4.0 の動作自体は可能なのでしょう。 ただ Parallels Tools は使えないでしょうから, あまり意味があるとは言えない気がします。

 今月になってからの発売ということで, 次期 OS である Windows 8 の Developer Preview 版が動作します。 Direct3D に対応していない Parallels Workstation 6 ですが, WDP には全てソフトウェア動作ながら Direct3D に対応している Basic Display Driver が存在しますので, Aero 等の利用も可能です。 この BDD ですが, 真っ当に Direct3D へ対応したもので, 後述するように, 重量級のソフトを含めて Direct3D 対応ソフトが動作する代物となっています。

・描画周り

[『FORTUNE ARTERIAL』 on Parallels Desktop 4]

 「Parallels Workstation」の名前に戻ってしまったことから判るように, Parallels Desktop for Mac のような Direct3D への対応は期待できなくなりました。 Win / Linux 版については完全に旧 Workstation 時代で留まっています。 VT-d を使用すれば可能ではありますが, コンシューマー用途で「Extreme 版を買った上で GPU 等を 2 枚挿し」といったようなことを行っても仕方がないでしょう。 幸い「ゲストでも Windows 7 や Vista が当たり前」といった状況には未だ至っていませんから, 現状では小さい問題とも言えます。 Windows Virtual PC (Windows XP Mode 含む。) 辺りと何ら変わりが無いわけですから。 ただ, 「タイムリミットはもう来ている」とも言えそうですけれども…。

従って, 右画像のように動作するのは基本的に DirectX 対応ソフトのみとなります。 ゲーム等では Direct Draw のアクセラレーターが必須となっているケースもありますので, その場合は DirectX レベルでも動作不可となってしまいます。 昨今では業務用のソフトでも Direct3D を必要としたりしますので, そういった意味では もはや Windows XP Mode 的にしか使えないのかもしれません。 (それなら Windows Virtual PC を使ったほうが親和性も高く遙かに話は早い。)

ともあれ, コンシューマー向けではなくなった上に極劣化版 Extreme である Parallels Workstation 6 に Direct3D を求めるのは無理な相談なのですが, それでも動作確認等で必要になるケースがあるかもしれません。 その際には Windows 8 (Windows Developer Preview) が救いとなるかもしれません。 OS の項で書いたとおり, WDP の初期値ドライバーである Basic Display Driver は全てソフトウェアながら DirectX 9.0ex へ真っ当に対応したものとなっています。 静止画状態となってしまう点さえ甘受すれば重量級のソフトでも動作しますし, 軽めのものであれば意外と普通に動作してしまいます:

上段画像の『Wiz Anniversary』や『プリミティブリンク』といったエフェクト等の表示など部分的に Direct3D を使用している程度のソフトであれば, 動作が重くなることもなく ほぼ普通に動作します。 WDP が日本語に対応していないことから, 現状では WA を始めとして途中で一般保護エラーとなったりインストールすらできなかったりしますが。 さらに, 下段右画像のように BDD で 3DMark06 まで動作してしまいます。 もっとも, これらの本格的な 3D 表示を行うソフトは「動作するだけ」で ほぼ完全に静止画状態となってしまいます。

・サウンド

 Intel 82801BA/BAM AC'97 として認識されます。 再生等には何ら問題は見あたらず途切れ等も皆無です。 入出力それぞれでホスト側のデバイスを指定できますので, 出力はともかく入力を使い分ける…といった使用法は有るかもしれません。

・ネットワーク

 通常は Parallels Tools を適用することになると思いますが, その場合は Parallels Ethernet Adapter として認識されます。 実装としては最適化されているわけですが, ゲストにとっては普通の 1.0 Gbs 対応デバイスと言えます。 IP アドレスの設定は本体のメニューから環境設定ダイアログを呼び出して行います。 何かあるとすればクラス A のプライベート IP アドレスが使われている点でしょうか?  他のソフトから乗り換えた場合に面食らう方が居るかもしれませんね。

さらに, 内部ネットワークや NAT では しばしばアドレス取得を行えなかったりインターネットへの接続を行えなかったりしますので, 状況が許すのであれば直接ホストの NIC へブリッジしたほうが良いでしょう。

・HDD

 VMware と同様に複数のスナップショットが作成可能となっていて分岐も行えます。 肥大化は VirtualBox 同様激しいようですので, こまめに整理したほうが良いでしょう。 意外と時間も掛かりますので。 「時間が掛かる」といえば, Parallels Workstation 6 になって一層仮想ディスクへのアクセスが遅くなった気がします。 起動するだけでも辟易とするくらいですので かなりの差があるのでしょう。

さらに, 安定性に少々欠ける嫌いがあるようで, 特にコンパクト化を行った後にスナップショットが正常に機能しなくなることが度々ありました。 どうも, ツール自体がスナップショット方面のマージを行うくせに, HDD 方面を管理している管理ファイルの情報が更新されない辺りが原因のようです。 あと, 注意したいのが HDD の UnDo 機能とスナップショットを組み合わせて上手く使えない点です。 上の不具合も絡んでいそうですね。 Undo 機能は「常にリバートして使う」といったようなケースの場合だけ指定するくらいが丁度よいかもしれません。

・Parallels Workstation 6 のインターフェイス

[コヒーレンス表示]

 VMware での Unity モードに当たる Parallels Workstation 6 のコヒーレンス表示ですが, 右画像のように VMware と そっくりなものとなっています。 スタートボタン直上に専用ボタンの出現する点まで同じです。 なので VMware を使ったことのある方であれば全く違和感なく使えることでしょう。 あ, 境界ラインは少々五月蝿いですので, 切っておいたほうが良いかもしれません。 「Parallels Desktop 6/7 for Mac よりも後発」ということで Modality モードの実装を期待したのですが, 華麗にスルーされたようです。

[スナップショット]

 スナップショットについては, 複数ショットの保存による世代管理や分岐が行えるようになっています。 世代管理を利用して新環境のテストを行ったり, 分岐等を行って一部のみ異なった環境でのテストを行ったり…といった用途に使えますが, HDD の項で書いたように, 少々安定性に欠ける嫌いがありますので, その点については要注意です。

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