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<改変公開:Nov.24,2009 最終更新:Aug.18,2011>

■ Windows Virtual PC


[Win VPC のスナップ]

・Windows Virtual PC について

 Windows 7 における Windows XP に対する互換性問題への解決策の一つとして実装された Windows XP Mode ですが, その実体は Windows Virtual PC で, 名前が示すとおり Virtual PC 2007 の後継バージョンに当たります。 良くも悪くも Virtual PC という点は置いておいて, ここに至り一般向けですらない Win 専用のアドオンとなってしまいました。

 後述するように, ゲスト側の OS としては Windows XP, Vista, 7 に対応しているわけですが, これは単に Windows XP 以降の OS が動作するというだけで, Microsoft としては Windows XP, それも Windows XP Mode のみを念頭に置いているのでしょう。 『Windows Virtual PC』として公開はしましたが, 一般向け PC エミュレーターとしては終焉を迎えたと言えそうです。

・ホスト環境等

 メイン環境である Satellite WXW/78DW で使用しています。 Windows 7 自体は Windows Vista よりも軽いはずなのですが, 巷の謳い文句と異なり, 起動やシャットダウンは Vista の頃のほうが数段速かった…という結果となっています。 それはともかく, 4GB (認識は 3GB。) メモリーと GeForce 8700M GT 辺りともなれば, こと Virtual PC を動作させる限りにおいては必要十分と言えそうです。

 Windows Virtual PC は『Windows 7 用のアドオン』ですので, 当然ながらホストは Windows 7 のみとなります。 もちろん Windows Vista 等へのインストールも行えません。 さらに, VT 必須の強制オンとなりましたので, VT に対応していない古い PC は全滅となります。 VMware 等との共存はβや RC の頃と異なり正式版では可能となっています。 もちろん, VMware 等の VT 使用を切った場合の話ですけれど。

[Jun.14,2010:追記]

 64 ビットゲスト環境に対応していない状況での VT 必須仕様が予想以上に不評だったのか, KB977206 に対する対策プログラムとして, VT 必須化を解除する更新モジュールが公開されています。 私もそうですが, 他の PC エミュレーター等で VT を使いたい方は適用しておくと良いでしょう。

[Aug.18,2011:追記]

 ホストが dynabook Qosmio T851/D8CR へ更新されたのですが, Windows 7 Ultimate (x64) 環境では他の PC エミュレーターとの共存が行えなくなりました。 ホストがブルーサンダーで落ちてしまいます。 もちろん x64 版の KB977206 は当ててあります。

・ゲスト PC 環境

 USB 等が有効となっていますが, PC 構成は Virtual PC 2007 等と変わりがなく, 引き続き 440BX マシンとなっています。 この版からは, 『統合機能』と名前を変えた Virtual Machine Additions の適用が必須となっていますので必ず適用してください。 適用しないと使い物にならないほど重い…といった辺りが同じなのは ともかく, ホスト・ゲスト間の切換など, エミュレーターの根幹を成す機能が Virtual Machine Additions のみで実現されています。

例えば, Virtual PC 2007 等では右 Alt キーでゲストからホストへの切換を行えましたが, Windows Virtual PC には この機能 (といいますか, この手のショートカットキー全般。) が実装されていません。 Virtual Machine Additions で追加されるマウスカーソルのシームレス移動でしか切換を行えない仕様なのでした。

 今回新規インストールを行った Windows XP Professinal SP2 の構成は次のとおり。 統合機能を適用することでゲスト側のデバイスやドライバーが変更されてはいるのですが, 同じ項目名を使用しているため, ぱっと見では区別がつきません:

[デバイスリスト]

CPU についてだけは, Virtual PC 2007 までと異なり, 特定のモデル (といいますかホストのもの。) を認識しなくなりました。 Intel 以外の CPU を使用している場合には, 使用するソフトによっては この辺りの影響するケースが出てくるかもしれません。

・ゲスト OS

 対応しているゲストは Windows XP SP3, Windows Vista,Windows 7 のみです。 Windows 2000 辺りだと動作するかもしれませんが, Me を含む Windows 9x はデバイスに対応しきれず再起動を繰り返し, Windows NT 4.0 や 3.51 はブルーサンダーを頻繁に拝む結果となっています。 それに対して, OS が古すぎて凝ったことを何もしていない状況に陥っている MS-DOS 6.2/V + Windows 3.1 + Win32s は普通に動作しています。 (^^;;

 Microsoft System Management BIOS Driver と Virtual PC Guest Bus Driver に上手く対処できれば Linux 等も動作するような気がします。 が, 動作したとしても Virtual Machine Additions が使えない限りゲスト・ホスト間の切換さえ行えないわけですから, 無理をして Windows Virtual PC を使用する必要はないでしょう。

[Jun.14,2010:追記]

 Windows 7 や Windows Vista ゲストにも対応しているものの, これらの使用は制限付きとなります。 まず, ホスト環境によっては Virtual Machine Additions が正常にインストールされず, 正しく「制限付き」となってしまいます。 そうでない場合も, インストーラーの挙動を見る限りは, Windows XP とは異なり本来の仕様どおりに組み込まれない部分が発生しているようです。

 次に, ネットワークの制限があります。 こちらもホスト環境に左右されるのだとは思いますが, Windows 7 / Vista ゲストでは「共有ネットワーク (NAT)」が使用できません。 いえ, 使用は可能なのですが外部ネットワークへは繋げません。 Windows Virtual PC 自身それと知っているのか, ホスト側 NIC へのブリッジ接続が自動的に設定されます。 この場合, ユーザーが どれを使用したいのかは判りませんから, 4 つあれば 4 つとも設定されます。 おもしろいことに, フラグが異なるのか VirtualBox の仮想 NIC にはブリッジ接続されるのに対して, VMware の仮想 NIC は綺麗に無視されます。 ブリッジ接続を行いたくない場合や, IP アドレスが枯渇している場合には Windows 7 / Vista ゲストは使えないことになりますので, 少々注意が必要です。

 他にも, Windows 7 辺りではキー入力自体が重くて取りこぼしが頻繁に発生したりと, 「対応」の謳い文句を疑いたくなる状況となっています。 (元より疑っていて, そのような記述をしているわけですけれど。 ^^;)  もっとも, これらの OS を わざわざ Windows Virtual PC で使用するケースは少ないでしょうから, Windows XP Mode さえ まともに動作すれば それで良いのかもしれません。

[Jun.25,2010:追記]

 Windows 3.1 辺りについては「動作しているだけ」です。 何しろ Virtual PC 200x と異なり, Windows Virtual PC は FD ドライブをサポートしていませんし, (Win3.1 では) Microsoft ネットワークも使えませんので。 もちろん方法はあるでしょうけれど, ごく普通のユーザーが使うのは無理でしょう。

・描画周り

[Jun.14,2010:改変]

[Win VPC の表示各種]

 基本的に機能追加版 Virtual PC 2007 ですので, Windows XP Mode 環境以外については相変わらず Trio64 PCI をボード段階でエミュレートしたものとなっています。 昔は これがメリットとなっていたのですが, 今となってはデメリットになってしまっています。 むしろ Windows 7 や Windows Vista 用のドライバーが存在していること自体驚きです。 もっとも, Windows Virtual PC 用に用意された専用バージョンですから, ライセンス云々を除いても使い回しは不可能ですけれど…。

化石以前の Trio64 PCI をエミュレートしている関係上 Direct3D は望むべくもないのですが, DirectX には一応対応していて, 右画像のように比較的最近のソフトでも動作が可能となっています。 ただ, それを想定して作成されたドライバーではないことから, 動作は VMwareVirtualBox に比べて相当重くなっています。 ゲームをプレーしようとする方は いないと思いますが, 業務用であってもホストの能力が低いと実用は苦しいかもしれません。

この Trio64 PCI の足かせは画面サイズにも影響していて, 特定の画面サイズしか設定できない上, 統合機能を有効とした場合は その設定したサイズからの変更が行えません。 ワイドサイズについて 1152x768 の次が 1440x900 しか存在しない辺りは個人的には非常に不便でした。 …Windos 7 辺りを使用する場合については。

 統合機能が有効となっている場合の表示は, 実際にはリモート表示となっていますので, Windows 7 や Windows Vista のゲストについては Aero が有効となります。 当然ながら当該ゲストが Aero に対応しているわけではありませんので あくまでも見かけ上の話なのですが, Windows Virtual PC の性格を考えれば それで十分でしょう。

・サウンド

 Virtual PC 2007 と同じで Sound Blaster AWE 相当となっています。 『統合機能』をインストールしないと使い物になりませんので, 必ずインストールするようにしましょう。

[Jun.14,2010:追記]

 統合機能が有効な場合と無効な場合とで出力レベルが全く異なり, しかも有効な場合は頻繁に「最初は必ず 100% 設定」といった現象が発生したりと, サウンド方面については意外と不安定な印象を受けます。 負荷にも弱いのか, ゲストを複数立ち上げると正常に再生されなくなったりもします。 この辺りは Virtual PC 2007 辺りのほうが数段安定していたと言えそうです。

・ネットワーク

 もはや意識する必要がない…といいますか, 弄ってはいけないデバイスと化しているような気がします。 せっかくの統合機能に影響が出たのでは意味がありませんので, 弄らないようにしたほうが得策です。

[Jun.14,2010:追記]

 ゲスト OS の項目でも書きましたが, Windows 7 や Windows Vista ゲストでは「共有ネットワーク (NAT)」が使えません。 環境を新たに作成した場合は, 勝手にホストの全 NIC へブリッジ接続が確立されますので, 注意が必要となります。 この辺りからも Microsoft の Windows XP Mode しか想定していない点が伺えます。

・HDD

 機能追加等は行われていますが, 上位互換は保たれているようで, 当該 OS が動作するかどうかは別として, Virtual PC 2004 等で作成した HDD イメージが そのまま使えます。

[Jun.14,2010:追記]

 余談ですが, 差分ディスクを有効としている場合, ついつい変更の適用を忘れがちになりますので注意が必要かもしれません。 処理時間については VirtualBox と いい勝負のような気がします。 少なくとも VMware に比べて相当時間が掛かりますので, こまめに適用しておくのが吉です。

・マウスポインター

 これまでの版で, 一番スムースにホスト・ゲスト間の切替が行われています。 マウスポインターがゲストのものに切り替わっているにもかかわらず それと気付かない…と言ったケースが生じるほど滑らかです。(笑)  もっとも, この機能でしかホスト・ゲスト間の切換を行えないくらいですから, スムースでないと困るわけですけれど。

・Windows XP Mode

[Windows XP Mode]

 Windows 7 の互換機能を使用しても動作しないソフトを動作させるための環境として用意された Windows XP Mode ですが, その実体は Windows Virtual PC で, VMware の Unity モードに相当する機能となっています。 VMware と異なり, こちらは『Windows Virtual PC とは似て非なるもの』として実装されていて, それが諸刃の剣となっています。

 『専用』であるだけにホストとの親和性が高く, ホスト側ドライブへのアクセスや USB などのデバイスが, アカウント制御やアクセス権に煩わされることなく気軽に行えますが, 同時に それがデメリットの一つともなっています。 XP Mode 側のウイルス対策等がホスト側と別途に必要ですから, それを怠った場合は被害がホスト側に直撃します。 『Windows XP Mode』という, さも Windows 7 の動作モードの一つであるかのようなネーミングが, 悪影響を及ぼさないことを祈りたいところです。

 Windows XP Mode で注意したい点は, XP Mode で起動したソフトを終了させても XP Mode の仮想マシン自体が終了しないことです。 メモリーを含めたリソースに余裕があれば気になりませんが, そうでない場合は注意が必要となります。 終了するには XP Mode の仮想マシンを Windows Virtual PC で起動する必要があり, この辺りを見ても, XP Mode が『起動しっぱなし』を想定していることが解ります。

[Jun.14,2010:追記]

 Windows XP Mode を仮想 PC として起動した場合は, WVGA 等ホストより一回り狭いハイカラーの固定解像度となり変更が利きません。 ご丁寧に, ドライバー自体を含め変更を行えないように施した専用モジュールが適用されています。 とは言うものの, Windows XP Mode に限って言えば通常画面はメンテナンス等でのみ使用するものですから, 大きな問題とはならないでしょう。 シームレス表示についてはホストと同じ環境となります。

[XP Mode の通常表示]

 Windows XP Mode の専売特許と思われがちなシームレス表示とホスト側スタートメニューへのアイコン登録ですが, 実際には その他のもろもろを含めて統合機能コンポーネントで実現されている機能です。 従って, Windows 7 ゲスト等でも, 統合機能を有効にしておけば, Windows XP Mode と同じようにシームレス表示やホスト側へのアイコン登録が可能となります:

[Windows 7 ゲストのシームレス表示]

シームレス表示ではゲスト OS 側の機能で描画が行われますので, Windows 7 や Windows Vista では Basic テーマで表示が行われます。 上の画像では判りづらいのですが, ゲスト側の Aero は しっかりオフになっています。

 この辺りについては, 通常の運用を行いたい場合などは「大きなお世話」でしかないのですが, 統合機能コンポーネントを組み込んだ際には既定値でオンとなっていますので, 設定で確認する癖を付けておいたほうが良いかもしれません。 統合機能を有効にするケースが多いでしょうから。

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