シナリオ  シナリオにおいて,史実や神話等が設定に絡むのは良くある話なので すが,このゲームでは,それが徹底して行われています。基本的には, シナリオ世界や歴史などの背景については,実際の西欧史を,キャラク ターの設定等については北欧神話を始めとした神話や伝承等を題材とし ています。上手くネタバレに繋がらないよう組んではありますが,完璧 に防ぐのは無理ということもあって,『一気に先が見えてしまう』と いったことも起こっています。(笑) かなり頻繁に歴史や神話のネタが登場することから,その辺りもプレイ する人によって是非が分かれるところで,諸刃の剣となっています。  『シャル&エンフィ』『ローラ』『アリス』といった3つのシナリオ (ルート)が存在しますが,これは,それぞれが大賢者(と校長先生)の想 定する事象の一つという設定にもなっています。デュオの選択により異 なる事象へ進むわけですが,中でも『シャル&エンフィ』ルートの事象 を大賢者が元々予定していて,『ローラ』,『アリス』と予定していた 事象からのズレが大きくなり,それを伺わせる台詞がシナリオ中にも登 場します。もっとも,『シャル&エンフィ』ルートにおいても予定外の 事態(紅の刻の再来)が発生しているわけですけれど。『アリス』ルート は予定と言うよりも『避けるべき事象』ですね。  以下の内容は,基本的に,興味のあった史実・神話等が絡む部分しか 考慮していません。アニメ等に関するものは除外しています。(^^;) 登場キャラ ルルガノ・ヤヌシェ・エンフィヌス (エンフィ)  このゲームのメインとも言えるシャル&ルル・シナリオの根幹と言え そうなのが,このルルの設定で,ハプスブルク家当主のマリア・テレジ アをモデルとした点から構築が始まっている気がします。  シナリオが,このマリア・テレジアがハプスブルク家を継承したこと に始まるオーストリア継承戦争を基礎として構築 (ただし,国々の構成 は18世紀末)されていて,おおよそ3~18世紀の西欧史を踏襲した形態を 採っています。となると,(このシナリオでの)正規エンディングはシャ ルではなくてルル・エンドということになるのかしら?(笑)  二つ名のヤヌシェは,ローマ神話に登場するヤヌス神から来ています。 前後2つの顔を持った扉の神です。 そこから,表の顔と裏の顔があって 『男の子として振る舞っているけれど本当は女の子』という点を暗示し たものとして使われているのではないかと…。もっとも,パッケージを 見ただけでバレますから,暗示も何もありませんけれど。(笑)  ルルの名前は『パンドラの箱』が第2部のタイトルとなっている戯曲 『ルル』からなのかしら? まさか風邪薬ではないでしょう。(笑) デュランダル・ファーネク (デュオ)  ルル=マリア・テレジアとしたのであれば, ここはフランツ1世をモ デル…としたいところです。ロートリンゲン公といった辺りもファーネ ク領に通ずるところがありますし。となると,やっぱり史実のとおり恋 愛結婚して皇帝になって欲しいところですので,ルル・エンドが正解と 言うことに。そして史実のとおり実権はルルに握られるのです。(笑)  ちなみに, フランツ1世とマリア・テレジアの間に生まれた末娘が, 有名なマリー・アントワネットだったりします。外交革命の最たる存在 ですね。  デュランダルの名前は,叙事詩ローランの歌に登場する剣がモデルと なっています。後述のデュランダルの項を参照。  ファーネクはドイツ語のFerne (遠く)からなのではないかと…。辺境 の山間領ということですから。 いえ, 楽譜で度々 "In der Ferne" と いった表記を見かけますので,"Fernek" の綴りを見た瞬間思い当たっ ただけです。(笑)  『蛇さん』設定は,シナリオ内で出てくる名前のとおり北欧神話のヨ ルムンガンドから来ていて,ヨルムンガンドが眠りから覚めることでラ グナロクが引き起こされる(とされている)ところから,ラグナロクの剣 を彼が持つ設定に繋がっています。デュオはヨルムンガンドを眠りから 覚ますことで生き延びているわけですから, 彼がどの事象を選択して も(どのシナリオへ進んでも)世界の終末となりかねない状況に陥ってし まうのです。  希望としては, ギルガメシュ叙事詩の蛇さん方面の設定(若返りの草 を食べて永遠の命を得る)も絡めて欲しかったところ…。 見方によって は,その辺りの設定が大賢者に受け継がれている…とも言えそうですけ れど。 シャルロッテ・カミル・ハーリンガム (シャル)  史実に該当する人物は存在しない(と思われる)のですが,マリア・テ レジアの夭折した兄(本来の後継者)を女性にした上で子供がいた設定と している気がします。  カミルの名は,象徴ということで『カール (Charles)』から来ている のが判りますが,『カミル』へ変化しているのは,ローラ先輩の設定に 絡むカーミラ(Carmilla)が影響しているのかもしれません。  シャルロッテの名は,フランツ1世のお母さん(エリザベート・シャル ロッテ・ドルレアン)から来ていると当初見ていた(ついでにエリザベー トを捩ってエルグリッテ)のですが,単にCharlesを女性名にしただけな のでしょうね。ハーリンガムはハンガリー王国が該当しそうです。 アリス・アリステル・ファーネク (アリス)  デュオの蛇さん設定に対するものとして,アリスにはトール (北欧神 話の雷鳴の神) という設定が存在します。ミョルニルはトール御用達と いうことで,同じ名前と能力の鎚をアリスが持っていることになってい ます。  デュオとアリス(と言うより,ラグナロクの剣とミョルニルの鎚)が宿 命の敵なのは,北欧神話において,ラグナロクの際にヨルムンガンドと トールが相打ちとなっているところから来ています。なので,シナリオ 中でも二人そろって自刃することに…。  アリスルートが選択可能となる時点では,デュオ=ヨルムンガンドで あることは判っていますので,地下迷宮でアリスが鎚を持って出てきた 瞬間,シナリオの結末が見えてしまうのが,かなり大きな設定上のマイ ナス点と言えそうです。 フローリアム・ブロセリアンド (ローラ)  フローリアムの名前はフローラを捩ったもので,そのフローラ自体は Florence (フィレンツェ)を掛けてあるのかもしれません。 というのは 余談で,重要なのは愛称の『ローラ』です。  ローラというのは,シェリダン・レ・ファニュの怪奇小説『カーミラ』 に登場するヒロインの少女です。ローラは普通の女の子なのですが,女 吸血鬼であるカーミラに襲われてしまいます。作品中ではローラが吸血 鬼となることはありません(何しろ,8年後にローラが回想した内容とし て物語が進んでいますので)が, いつの日か吸血鬼となってしまう運命 なのかもしれません (読者に想像の余地が残されていますので,結末は 読者次第です)。 反対に,ローラ先輩は,一度命を落とした結果,ヴァ ンパネラのような因子により蘇ることとなります。『カーミラ』の原作 は読んでいなくとも,『ガラスの仮面』の中で登場したのを覚えている 方は多いような気がします(亜由美がカーミラ役を演じています。)  因子の名前が『フェンリルの因子』となっていますが,これは,もち ろん北欧神話のフェンリルから来ています。が,名前が使われているだ けで,特に設定に絡んでくることはありません。デュオがヨルムンガン ドの因子を持っていることに対応させただけなのでしょう。ちなみに, フェンリルとヨルムンガンドは兄弟だったりします。  余談ですが,吸血鬼は,家人に招かれないと自分が初めて訪れた家に 入ることが出来ません。なので,ローラ先輩はデュオに『入ってもいい ですか?』と訪ねているのです。もちろん,この時点では入ったことが あるわけですが,『デュオが選択した』という流れに繋がっているので しょう。あと,カーミラは,日に当たっても平気なのは同じとして,賛 美歌を聞くと動けなくなるのですが,ローラ先輩は教会に入り浸ってま すね。メンテ担当のネーブル先生がいるわけですから,そこはフォロー されているのでしょうけれど。(笑)  ブロセリアンドの名前は,アーサー王伝説のブロセリアンドの森が該 当しそうです。無理矢理こじつけるなら,イギリス繋がりということで, ローラがヴァンパネラの能力を持っていることでしょうか?  国の状勢に影響を与えるほどの商人という点では,メディチ家がモデ ルとなっているような気がします。メディチ家は,元々名前のとおり薬 (ミョウバン)を商っていましたが,このシナリオでは医学方面を含めて 全部魔法で解決…なので,魔法を商っていると…。となると美の都出身 とする必要がありますが,紅の刻の災厄に遭っていますから…。  なお,『ヴァンパネラ』と書いているのは,『ヴァンパイヤではなく て,ヴァンパネラ(それもエドガーのような高等な部類)のようなもので あって欲しい』という個人的な希望が反映しているだけです。(笑) ソフィアーシェ・ラフォニット (ソフィア)  思い当たる設定が浮かびません。(笑) というか,ソフィアの扱い自 体が酷すぎます。『対抗馬を用意した』とか『人間ではないモノなど却 下』というユーザの逃げ道として存在している…というのでは可哀想で す。  ソフィアの名前はΣοφια(知恵)から来ていそうです。学園随一の 軍師ですから。 グラニティアーナ・クリスティア (グラニテ)  設定はよく分かりませんが,『はねめだま』を使った転送魔法が使え るところなどからすると,本来は,もっと重要な役所だったような気が します。『クリスティア』の名前も意味ありげですし,リオルと同じよ うにアリスの監視役という感じがしないでも…。けれど,実際には子犬 担当キャラの側面だけが残ってしまったと…。(^^;)  名前は…,まさか花崗岩(granite)と水晶(crystal)から?(笑) いえ, 後者は Crist (キリスト) のほうが,あり得そう…というか,普通に見 かける姓ですけれど…。 ディアナ・セレンディル (ディアナ先生)  ディアナの名前はローマ神話のディアナ(ギリシャ神話のアルテミス) から…と言えなくもありませんが,おそらく関係ないのでしょう。 エスタリオル・アルク・レヌスベルン (リオル)  『イスカンダリアの双角』ということで,有角王,アレクサンドロス 3世(=アレキサンダー大王)が設定の一つとなっています。大図書館は, もちろん蔵書70万巻とも言われるアレクサンドリア図書館のこと。その まま登場していますし。  エスタリオルの名前はゲド戦記からですね。『(二つ名を)友情の証と して,いずれ教えよう』といった辺りは,そのままですし。でも,『そ うだな…,卒業の折にでも…』なんてところはリオルらしいですね。  レヌスベルンの名前は, 教皇リヌス(聖ペトロの後継者としてローマ 教皇となった聖人です)から来ているのかしら?  リオルが実は教央…という設定の必要性ですが,シナリオ自体として は必要ないのでしょう。が,デュオが世界の終末さえ導きかねない懸案 事項であることは確かですから, それなりの人物(立場もさることなが ら, ここでは,不完全ながら未来をも見渡せる点が重要なのでしょう) を監視役として登場させているのでしょう。リオルは,大賢者等が好き 勝手(思惑通り)に歴史を操ることを良しとしていない風なので,自主的 に監視役となっていそうです。能力が能力なので,立場は放っておいて も後からついて回ると。(^^;) ローラ先輩のシナリオは教会絡みですし。 ジウスドラ・ノア・ウトナピシュティム (大賢者)  大賢者が自称したフランツの名前は, デュオの設定であるフランツ1 世から来ているのでしょう。  本名のほうは,ギルガメシュ叙事詩のウトナピシュティムが設定の一 つとなっています。永遠の命だったり,寝溜めが出来るのも,それが所 以です。二つ名のノアは大洪水繋がり (どちらも方舟を造って大洪水を 逃れている) で,さらに,ジウスドラも古代シュメールの神話において 方舟で大洪水を逃れた人物です。『ジウスドラ』には『命を見守る者』 という意味があって,この『ジウスドラ』をアッカド語に翻訳したもの が『ウトナピシュティム』です。  狼が苦手なのは,テュール(北欧神話のアース神族)がフェンリル(狼) に右手を食い千切られた話から来ていて,『失われた右手』『グレイプ ニル』の設定も,ここから来ています。後述のグレイプニルの項を参照。 狼が苦手…それも当のフェンリルの因子をローラ先輩が持っているわけ ですから,町で会った際に大賢者がローラ先輩に苦手意識を持っていた のには,その辺りが関係しているのかもしれません。  また,ギリシャ神話のゼウスも絡んでいて,雷の使い手(雷鳴の主)と いった辺りに現れています。暴れまくり(破壊しまくり)なのは,ゼウス (=ジュピター)が破壊の神でもある点が影響しているとも, テュールが 軍神である点が影響しているとも言えそうです。  彼が14歳くらいの姿をしているのは,シナリオ中からは,アリスと同 様に膨大な魔力を秘めている点が影響しているとも受け取れますが,見 方を変えると,アーサー王伝説の魔術師マーリン方面が絡んでいるのか もしれません。14歳くらいの少年に変身したり,星見の塔に籠もったり していますし。 モンテシーノス (校長先生)  『隻眼の翁』『大魔術師』というところから,北欧神話のオーディン 的要素の絡んでいることが伺えます。ただ,槍(グングニル)などは大賢 者のほうで使われているようですね。あと,天候を操るなど,こちらに もゼウス的設定が存在します。また,カドケウスの杖の持ち主であるこ とから,同じギリシャ神話のヘルメス的設定も存在していることになり ます。  大賢者と校長先生の設定が被り気味なのは,『我と我』といった表現 が登場しているところからして,『実は同一の存在』という裏設定があ るのかもしれません。もっとも,ラグナロクとミョルニルも『我と我』 と言っていますけれど。(笑) スニースクル・ヴァレンティクス (スニーク)  30年戦争で活躍したヴァレンシュタイン候がモデルです。シナリオ上 では近衛騎士ですが,史実ではベーメンの傭兵隊長からオーストリア軍 の総司令官となった人物です。ただ,30年戦争中に皇帝により暗殺され てしまっていますので,オーストリア継承戦争には絡んできません。 ノルヴァン・ネーヴルステア (ネーブル先生)  大穴はパリのノルヴァン通り(綴りが違う),ファジーネーヴル,ステ ア(混ぜる)…。いえ,グラニテ辺りにも,それらしき遊び要素が見え隠 れしていたもので…。(笑) エルグリッテ・カミル・アプセルブルック  シャルと同様,エリザベート・シャルロッテ・ドルレアンの『エリザ ベート』を捩ったもの…と思っていたのですが…。 が,フランツ1世の 姉妹にもシャルロッテとエリザベートの名前がいっぱいありますし,そ もそもフランク王国絡みの貴族には,これらの名前が普遍的に…。(笑) ハインリヒ・ハーリンガム  ハインリヒの名前は神聖ローマ皇帝のハインリヒ7世から来ていそう な気がします。 祖母さん  直接繋がる設定は存在しないのだと思います。  こじつけるのなら(笑), フランツ1世の祖母は,父方母方共にオース トリア継承戦争の時点では亡くなっているのですが,母方重視のような ので, シャルロッテ-エリザベート・ド・バヴィエールが相当すること になります。(笑) ちなみに,ファルツ選帝候ヴィッテルスバッハ家の 出身でオルレアン公フィリップ・ド・フランス(ルイ14世の弟)に嫁いで います。  ここでもシャルロッテの名前が絡んできますが,さらに,そのお母さ んがシャルロッテ・フォン・ヘッセン-カッセルだったり…。 その他登場人物など アプセルブルック大公家  オーストリア大公ハプスブルク家がモデルで,シナリオの根幹となっ ている設定の一つです。 レイゲンウス大司教  選帝候のレーゲンスブルク大司教(マインツ大司教)がモデルです。 クィールン大司教  選帝候のケルン大司教クレメンス・アウグストがモデルとなっていま す。シナリオ中では語られていませんが,杖を手に入れルルを暗殺した 後には,パルファルツ宮中伯に帝冠を授けるつもりだったのでしょう。 (笑) 史実では,兄であるバイエルン選帝候のカール・アルブレヒト (カール7世)に帝冠を授けています。 パルファルツ宮中伯  選定候のライン宮中伯 (ファルツ選定候) がモデルです。シナリオ内 ではバイエルン選帝候のカール・アルブレヒト(カール7世)の役所とし て登場しています。  史実では,カール7世の死去に伴い,息子のマクシミリアン3世ヨーゼ フが後を継ぎますが, 子供がいなかったため, 遠戚のファルツ選帝候 カール4世フィリップ・テオドールが(マクシミリアン3世の死去後)バイ エルン公を兼ねることとなります。  このゲームのシナリオは,事件自体は1740年代のオーストリア継承戦 争を採用していますが,国家等についてはシナリオ内の年代と同様1790 年頃の状勢を採用しているようですので,その辺りの関係から宮中伯と して登場しているのでしょう(断絶したのは1777年)。 ジクス王  ザクセン選帝候がモデルです。ザクセンが王国となったのは,1806年 の神聖ローマ帝国解体時なので,この時点では選帝候です。オーストリ ア継承戦争では,当初敵対してベーメン(ボヘミヤ)に侵攻するものの, 後にはオーストリア側に立つこととなります。  シナリオ上に直接登場していたなら, フリードリヒ・アウグスト2世 (ポーランド王アウグスト3世)がモデルとなっていたことでしょう…。 プローインス王  選帝候のプロイセン王フリードリヒ2世(フリードリヒ大王)がモデル です。本拠地は神聖ローマ帝国内ではないのですが,旧ブランデンブル ク辺境伯の領地が帝国内に存在します。  そもそもシュレージエンに侵攻してオーストリア継承戦争を起こした のは,この御仁なのですが,シナリオ中では登場してきません。(笑) ハルナルヴァ王  選帝候のハノーファー公がモデルです。オーストリア継承戦争時であ れば,ゲオルグ2世アウグストがモデルとなりますので, ハノーヴァー 朝のイギリス国王(及びアイルランド国王)ジョージ2世でもあることに なります。つまり,西の島国の国王は,この人ということに。(笑) バルデン大公  選帝候のバーデン辺境伯がモデルです。 カセール大公  選帝候のヘッセン・カッセル方伯がモデルです。 ザールツヴァルグ公  選帝候のザルツブルク公がモデルです。 国名・地名など 神聖レミシュエウス帝国  神聖ローマ帝国から来ていて,ルルがレミシュエウス王なのも,ここ (ローマ王=戴冠前の呼称) から来ています。 レミシュエウスの名前自 体は, ドイツ語の『Romisches Reich(ローマ帝国)』が,そのまま使わ れています。  なお,この名前はシナリオ上でも混乱していて,レミシュエウスとロ ミシュエウスの2つが混在しています。 しかも,混乱したまま音声収録 されてしまっているので,すでに修正不可だったり…。混乱の原因は, 'o' がウムラウトであることによる,単純な表記のし間違いなのかもし れませんが,『ロミシュエウス』では,(ローマと比べても)少々そのま ま過ぎるから『レミシュエウス』に…と,途中で変更されたのかもしれ ませんね。 イザヴェイル王国  ヴェネツィア近傍ということであれば,ヴェネツィア共和国がモデル ということになりますが,名前はどう見てもカスティーリャ王国のイサ ベル1世(女王)から来ているように思えます。 東の異教徒  イスラム勢力であるオスマン・トルコがモデルです。 オーセベルウィ地方 水の都 アルティオ  『水の都』とくれば,ヴェネツィアがモデルということになります。 運河やゴンドラも登場していますし。名前はケルト神話の女神アルティ オから来ているのでしょう。さすがに熊さんは登場してこないようです けれど(ファンタジー小説のクリスタニアに登場する神獣のように, ア ルティオは熊の姿をしています。) 美の都  名前のとおりフィレンツェがモデルです。 史実では,フランツ1世が マリア・テレジアと結婚する際の条件として,ロートリンゲン公国をフ ランス王国へ割譲する代わりに,メディチ家が断絶して空位となってい たトスカーナ大公 (フィレンツェが含まれます) を継承することになり ます。 ファーネク山間領  デュオのモデルがフランツ1世ということであれば, ロートリンゲン が相当することになりそうです。一方,ファーネク家の成り立ちといっ た面ではリヒテンシュタイン家的な感じもします。 西の大王国  フランス王国がモデルです。 西の島国  イングランド王国がモデルです。 (シナリオ上の)歴史など ギシュ・ビル・ガ・メス  ギルガメシュ叙事詩から来ています。ウルクの実在の王,ギルガメ シュを題材とした物語で,ここで語られている洪水を逃れた人物が,大 賢者の設定の一つとなっているウトナピシュティムです。洪水を生き延 びたことにより,神々の集会に立ち会い永遠の命を得ることとなります。 旧教の創世記  ユダヤ教旧約聖書の創世記から来ています。 北洋の神話  北欧神話から来ています。『スルトの放った炎が世界を焼き尽くし』 の部分はラグナロクの顛末を,ほぼ,そのまま採用しています。 メルリヌスの故事  メルリヌスといえば,アーサー王伝説に登場する魔術師マーリンのこ とですが,このシナリオに出てくるようなエピソードってありましたっ け? 覚えがありません…。(^^;) 大昔の帝国  ローマ帝国がモデルです。ロウムは当然ローマのことで,ロウム語は, その公用語であるラテン語から来ています。『二つに分かれた』は 395 年の東西ローマ帝国への分裂を指しています。 このシナリオでは,476 年の西ローマ帝国の滅亡までが『帝国』として扱われていて,ビザンツ 帝国は含まれていないようですね。 大槌候  カール・マルテルがモデルです。マルテル=鎚なので,大槌候。(笑) フランク王国の実権を握っていたものの,自身はメロヴィング朝の宮宰 に留まっていて,実際にカロリング朝を開いたのは息子のピピン3世(小 ピピン)でした。 その子(カール・マルテルの孫)が有名なシャルルマー ニュ(カール大帝)です。 トゥオーラ・パルティエ間の戦い  ウマイヤ朝の侵攻を退けたトゥール・ポワティエ間の戦いが,ほぼ, そのまま使われています。 正統大帝  シャルルマーニュ(カール大帝)がモデルです。教央レイオヌル3世も, 大帝に帝冠を授けた教皇レオ3世から来ています。 このカールの戴冠か ら中世ヨーロッパの歴史が始まります。 大王国 (古王国)  フランク王国がモデルです。『3つの版図に分割』は, ヴェルダン条 約で分割相続された東フランク,中フランク,西フランク王国を指しま す。  シナリオ中では正統大帝の死去に伴って分割されたようにも取れます が, 史実では,3人の嫡男の中でカール大帝死去の時点で唯一人生存し ていたルートヴィヒ(ルイ1世)に継承され,そのルートヴィヒ死去の後, 紆余曲折を経てヴェルダン条約により3人の息子ロテール, シャルル, ルイに分割相続されることになります。ちなみに,ロートリンゲン (ロレーヌ)は『ロテールの国』という意味です。  大王国と古王国に分かれているのは,上で書いたようにカールの戴冠 が古代と中世の境と見なされることがあるからでしょう。 ルーネナッシメント  カール大帝が企図したカロリング朝ルネサンスから来ています。 レイドルフ2世  神聖ローマ皇帝のルドルフ2世がモデルです。 なので,錬金術に傾倒 しています。(笑) プラファ  チェコの首都,プラハがモデルです。神聖ローマ帝国の首都でしたが, 30年戦争終結後,首都がウィーンに移されます。  ルドルフ2世の頃には, シナリオにもあるように多数の芸術家が集め られ,文化的に繁栄しました。 神聖でも、帝国でも、ましてやレミシュエウスなどでもない、細切れの空白地  ヴォルテールの皮肉『神聖ではないし,ローマ的でもない。それどこ ろか帝国ですらない』から来ています。 場所など アルヴィース島  古エッダの『アルヴィースの歌』から来ていて, 『完全な賢者(全て を知る者)』という意味があります。なので『賢者の学院。』 スキンファクシ  北欧神話に登場する天空を駆ける『昼』の馬から来ています。金のた てがみを持っています。 グリムファクシ  北欧神話に登場する天空を駆ける『夜』の馬フリムファクシから来て います。白のたてがみを持っています。 学院  学院の名前は上述したとおりです。また,ある意味,学院の構造自体 が後述する北欧神話の9つの世界を表しているとも言えます。 中央塔は シナリオどおり世界樹ユグドラシル, 3つのビフレストは,下記のとお り要所を繋ぐ橋なのは無論のこと, ユグドラシルの3つの根をも意味し ていそうです。そして,星見の塔,通常の学舎等,地下迷宮(笑)が,そ れぞれ第1層,2層,3層に相当,といったように…。 ビフレスト  北欧神話のビフレストから来ています。 9つの世界の第1層と第2層を 繋ぐ虹で作られた橋なので,シナリオ中でも要所を繋ぐ橋として登場し ています。 温室  フランツ1世の造ったシェーンブルン宮殿一角の植物園がモデルとなっ ているような気がします。どかんと泉が存在するのは,シェーンブルン の意味(美しい泉)が関係しているのかしら?(笑) その他 エリティル  名前はエーテルから来ています。20世紀に入るまで,空間に充満して いるとされていた物質です。ある意味,素粒子理論の方面で,空間に粒 子と反粒子の組として充満している…と考えることも出来そうなので, その辺りからプリママテリアの設定に繋がっているのかもしれません。 人類には不可能ですが,ある種の錬金術は原理的には可能ですし,実際 に自然現象として発現していますから (凄いこじつけ ^^;)。  ちなみに,イーサネットのイーサ(Ether)は, 字のとおり,このエー テルが元ネタ。 デュランダル  叙事詩ローランの歌に登場する英雄ローランが持つロングソードから 来ています。黄金の柄には,聖ピエールの歯,聖バジルの血,聖デュニ (ローランの守護聖人)の毛髪,聖母マリアの衣服の一部…といった聖遺 物が収められていて,シナリオでも,ほぼそのままの設定で登場してい ます。  デュランダルの名はイタリア語のドゥリンダナ(Durindana) から来て いて,『不滅の刃』という意味があります。  ローランの歌はシャルルマーニュが行ったサラセン討伐,特にロンス ヴォの戦いを中心とした武勇伝です。 カドゥケウス  ギリシャ神話のヘルメスが持つケリュケイオンの杖から来ています。 カドゥケウスはローマ神話での呼び名で, シナリオと同じく2匹の蛇が 螺旋状に巻き付いた黄金の杖です。 ミョルニル  北欧神話の雷神トールが持つ鎚から来ています。掲げることで雷を呼 び出せ,シナリオ中でもアリスが雷を発生させます。北欧神話最強の戦 神なので,その威力はすさまじく,大賢者の比ではありません。(笑) ミョルニル(Mjolnir)は『打ち砕くもの』の意味です。 なので,『お前 みたいなのを叩き潰す』といった表現が…。 グレイプニル  北欧神話に登場する魔法の紐 (足枷) です。グレイプニル(Gleipnir) は『むさぼり食うもの』の意味です。フェンリルを捕縛するために作ら れたもので,そのフェンリルを繋ぐ際にテュールが右腕を失います。 パーヌドゥラの箱  ギリシャ神話のパンドラの箱から来ています。名前も内容も,そのま ま。(笑) 予兆  このシナリオでは,パンドラの箱に残ったものとして予兆説が採用さ れています。大賢者の台詞『出さなかったモノ』から,中でも『最後に 残るようゼウスがし向けた』ほうの説を採用していることが判ります。 タルタロス  名前のとおり,ギリシャ神話のタルタロス(もちろん,神様ではなく 奈落そのもののほう)から来ています。 9つの世界  北欧神話から来ています。世界の総称で3層からなっています。1層に はアース神族の国アースガルド,妖精の国アルフヘイム,ヴァン神族の 国ヴァナヘイムが,2層には黒い妖精の国スヴァルトアルフヘイム, 人 間の国ミッドガルド,巨人の国ヨトゥンヘイムが, 3層には死の国ヘル ヘイム,氷の国ニヴルヘイム,炎の国ムスペルヘイムがあります。  第1層と2層を繋いでいるのが,虹の橋ビフレストです。 ユグドラシル  北欧神話に登場する世界を支える(というよりも世界そのもの)巨大な 樹 (世界樹) から来ています。あの図も,そのままですね。 ノルン  北欧神話の運命の神から来ています。時を司り,過去を司るウルド, 現在を司るヴェルダンディ, 未来を司るスクルトの3姉妹とするのが普 通です。 スクルトはヴァルキリーの1柱。 我が槍  このシナリオのパターンからするとグングニルってことになりそうで すね。ゼウス=ジュピター=オーディン…という流れ。 アンジュ-ラルム